仲村比呂のブログ

Written by Nakamura Hiro

選択と後悔は無限に続く?

 人は後悔します。後悔するのが人間だと言ってもいいでしょう。進学や就職、結婚でも何か自分で選んだ結果、それが失敗に終わったと思うからでしょう。

 あの時、あの人と結婚していたら、あの会社を行っていたら、あの大学に行っておけば、あの商品を買わなければ良かった等々。自らの選び間違いが原因となっていることがほとんどです。 

 今が辛いとき、過去を振り返ってつい考えてしまう。それは自然な感情です。しかし、人によっては、それが過度に過ぎる人も多いと思います。何かしたらまず後悔から入って反省する。

 たとえ周りから見て十分成功じゃないかと思っても、常に不満げで、過去のことについて後悔ばかりしている人がいると思います。そういう人は、大概今の人生に不満を抱いていて、自分と折り合いがついていない場合が多いです。

 しかし反面、人生のいろいろな局面で、それだけ何かを選ぶという行為は大変なことの証拠でもあります。ただ、同じ選択にしても、就職という重大事から、晩ご飯の食材選びのような日常生活上の些細な選択まで千差万別です。

 当然、自分にとって取るに足らない選択になるほど、人の後悔は薄くなっていく。あのスーパーのあの肉の方が10円安かったと思っても、お腹の中に入ったところで一瞬のうちに忘れられてしまうでしょう。

 しかし、就職となると話は全然違ってきます。入社して頑張った果てに、へとへとに死にそうになって気づく。自ら選んだ企業がブラック企業だと。初めて後悔して反省する。当時、ホワイト企業にも内定をもらっていたのにと、どうして真剣に選ばなかったのかと。

 こうして重大な選択ほど、後悔するのが遅くなりがちになるというのは、心理学的に有名な「コンコルド効果(サンクス効果)」というものが働くからだと言われています。

 コンコルド効果というのは、ある対象への金銭的・精神的・時間的投資をし続けることが損失になるとわかっていても、それまでの投資が無駄になると惜しみ、やめられなくなる状態をいうものです。

 つまり、後悔から反省してしまうのです。そして自分を納得させようとする心の動きです。
「自分が甘いのだ」、「頑張りが足りないのだ」、さらに置かれた状況においても、「どこへ行っても同じだ。」「どんな仕事にも面白みがある。」「ここで我慢を身につけるのだ。」「これが社会人というものだと。」「甘えているだけだ」と。

 しかし、いくらこうした脳内会話と自己洗脳でいくら自分を納得させても、いざ朝起きると、会社に行くのがたまらなく嫌だ。頭やお腹が痛くなる。いくら説得しても身体が言うことをきかなくなる。それでもさらに何とか行こうと説得を試みる。

 これが、毎日続くと、ある日突然、やがて思考がクラッシュしてしまいます。考えるのを一切辞めてしまう。それを世に言う、「うつ」状態だと思います。

 人は基本的に鬱状態だという、うつの話はまた後日にするとしまして、人は重大な選択をして後悔すればするほど、現実と折り合うために自分に無限の説得を試み続けます。

 この断ち切れない連鎖をどう断ち切ったら良いのか、それを学術的、医療的にするにはたくさんの心理学的な本が出ていますからそれに譲りますが、まずは説得をする前に、選択したこと自体を受け入れることだと思います。

 当時を振り返って、他の選択肢がたくさんあるように見えても、また同じ状況に戻れば、人は間違いなく同じ選択をします。そして同じように後悔をします。もちろんこの時反省しておけば、将来において同じような状況がやって来た時、間違えないいられると言われるかもしれませんが、全く同じ状況など絶対にやって来ません。それが人生だと思います。

 そしていくら後悔し反省しても、その人はそれほど変わらない。村上春樹氏は小説『ダンスダンスダンス』において、その変らない選択することを、その人の「傾向」と呼びました。人は似たような選択を迫られた時、必ず同じような選択をする、その積み重ねがその人自身を作り上げているからだと。

 ですから、こう言っては身も蓋もないですが、大きな選択をしたときほど、コンコルド効果が発揮される前に、後悔していたとしても絶対に反省はしないことです。そして、選択したことを人生の大事業だと思わないことです。

 そして、本当に辛いと思ったら自己洗脳の果てにクラッシュしてしまう前に、逃げるのです。それでも逃げられないというのでしたら、再び会社に例えると、「転職活動を始めてみよう」「資格を取ろう」、「組合活動を頑張ってみよう」とか、現状の辛さと、逃げたいという切迫した思いを、うまく弁証法的に解決することだと思います。

 人は生きている限り、今日の食材から死に方まで、一生選択し続けなくてはなりません。選択こそが人生とも言えます。選択したものをいちいち後悔し反省する癖をつけると、人は次第に選択自体を億劫がって避けるようになります。つまり選ばなくなる。

 先生が勧めた進学先、コネがあった就職先。コンピューターが選んだ結婚紹介サービスの結婚相手。口コミの評価が高いからこのレストラン。腫瘍が見つかって医者が勧めるから手術。家族が言うから延命治療。そうなると、人生は他人の手に委ねがちになり、さらにコンコルド効果が発揮されやすくなっていきます。

 これはある意味、生きることの放棄でもあります。ですから目の前の選択すべきことからは絶対に逃げてはいけない。そして後悔しても反省しない。

 そして選択した「結果」、「こと」、「もの」、「相手」に対してひとまず最低限の責任を持つこと。そして後悔を忘れる。それが永遠に続く選択と後悔との付き合い方だと思います。

 昔、学校で反省文を書きなさいといって、反省しないことの反省文と書いて意外に受けた仲村でした。
 ではまた

ダンス・ダンス・ダンス

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