仲村比呂のブログ

Written by Nakamura Hiro

最強のモテ理論とは?

 大学時代の友人で、かつて「モテ理論」というものを標榜する男がいた。

 その理論はいたって簡単である。「人は2種類に分かれる。モテる奴かモテない奴」だ。

 その理論は、中学時代に発想され高校時代で検証し、大学時代に完成させたらしい。

そして、その理論の結末はこうだ。

 「モテない奴は、俺は相手にしない」。

 この理論は、コンパや飲み会で必ず披露され、盛り上がると同時に、モテないと判別された人達からすさまじい顰蹙と怒りを買った。 当然である。お前は俺にとって価値がないと烙印を押されたようなものだからである。とても無視できなかった。女性からワインを派手にぶっかけられたのを見たこともある。それでも彼はまったくめげなかった。

 これを普通の男がやれば、とても普通に生きていけないだろうが、彼はモテ理論を唱えることを許してもいい存在だった。ジャニーズ系の顔立ちをしていて、愛嬌がありとにかく女性にモテた。モテ理論以外にも話が上手く、コンパの時話している相手の女性の顔が少しずつ上気していくのを何度も目撃した。そこで突然モテ理論を持ち出すのだから、相手も怒ったり言い訳したりするわけである。

 その判別基準はただルックスや家柄、地位や、名誉ではなく。ただモテるか、モテないかだけである。それは男性でも女性でも同じだった。いくら美人でも「モテない」と判別すれば、その後一言も話をしなかった。

 時には、モテないと判別された者が怒って論争をふっかけたことがあった。しかし、彼はいくら酔っていても一度も言い負かされたことがなかった。

 だから、「モテ理論」は別名「無敵理論」とも言われていた。

 彼は、言い争いになるとトドメの言葉を使うからだ。「だからモテないんだよ」と。

 そして言われた相手はだいがい黙ってしまった。それか言い訳をした。

 つまり、人は本当のことを言われると腹が立つ、自分がモテるかどうかなんてことは当の本人が一番わかっているからだった。

 常日頃、モテる奴は放っておいてもモテる。モテない奴は一生モテない。偶然モテ期が訪れることがあったとしても、それは神の恩寵に過ぎないから、ありがたく頂戴しておけばいいと言っていた。

 そして、実際に彼はモテると判別した相手しか友達にしなかった。彼にモテると認定されてうれしがっていた友達たちは、彼を中心にしたモテ軍団を形成し、大学の中でスクールカーストの上流階級を形成した。彼らがキャンパス内のメインロードを闊歩する姿は、少し前に流行った歌舞伎町の道を闊歩するカリスマホストたちを彷彿させるものだった。

 別に彼を擁護するわけではないが、彼は別にモテないからと言ってその相手を嫌ったり、けなしたりすることはなかった。ただ住む世界が違うと言って、まるでアフリカの原住民のように、別世界の住人だと思っているだけなのだ。

 それと同時に、自分がモテることは、たまたま今の時代にあっているからで、もしこれが江戸時代、ましてや原始代だったらまったくモテなかったかもしれないとちゃんと自覚をしていた。明日になったらわからない。だから驕ったようなところもなかった。

 今の時代でも、モテるモテないというテーマはナイーブで、深刻な問題であり、意外に年をとっても気になるものだ。会社で部下や上司に好かれたいと思うのは、モテるモテないの話に通じる。

 そして、「モテたい」については、たくさんの本もあれば、ネットで検索すればいくらでも情報が出てくる。そしてその情報を参考にして、モテない人は自己を変えようと努力する。自分を変えられなければ、よりいい大学、よりいい会社、より金儲け。外部要因でカバーしようとする。

 彼曰く、そういう努力はしてもいいが、そう思った時点で、その本人をさらにモテなくさせる行為だと言っていた。外部要因で手にしたモテは、いずれメッキがはげるときが必ずくる。モテる奴は努力しない。自然に磨かれるだけだと。

 こうして必死で努力する彼らを涼しい顔で眺めていた。すごく仲がいい友達とは言えなかったが、この理論を聞いて、意外に奥が深いと感心することが多々あった。

 モテ理論が無敵なのは、あくまでそれを言う者の主観に過ぎないからである。客観的尺度なども存在しない。もし尺度というものを持ち出せば、その尺度を問題にすることができるからだ。

 だから、その本人がそう思っているというのを、相手がいくら理論を持ち出してひっくり返すことは絶対に不可能である。それが直感に近ければ近いほどなおさらそうである。それは内なる信仰と同意だからである。それを教えてくれた。

 自分の主観をはっきり言い切れる人、言い切れる強さを持つ人は、学生だろうと社会人だろうと、その所属する集団の中で無敵になれる。 

 少し前に嫌われる勇気という言葉が流行ったが、嫌われようと呆れられようとモテ理論を恥も外聞もなく言い切れる強さを前にしては誰も太刀打ちできない。

 あれから何十年たって、時々この理論のことを思い出す。そしてその友人とはずいぶんと会っていないが、その理論を今でも貫いているのかとても興味がある。そしてぜひ貫いていて欲しいとも思っている。

 と、初対面の時その友人から「おまえはおまけしてギリギリセーフ」と言われて、複雑な気持ちになったのを今でも覚えている仲村でした。
 ではまた

嫌われる勇気

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モテキ

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  • 発売日: 2013/11/26
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