仲村比呂のブログ

Written by Nakamura Hiro

文学は儲かる・・・のか?

 文学は儲かるのか。それはこれから文学をやってみようと思う人の最大の関心事でしょう。答えは「儲かる」。そう断言したいところですが、実際はなかなか難しいところがあります。そして儲かると言う言葉には、少し下品な響きがあります。しかし広辞苑によると、単に「利益を得る」であり、単に金儲けという言葉とは少し違うニュアンスがあります。

 昔から、演劇と文学と美術はかぶれると言われて、両親から反対される職業の代表格でした。今ではその中にお笑い芸人も入るかもしれませんが、その状況は今もあまり変わっていないでしょう。

 それより、昔よりさらになるのが難しくなっています。もはや職業とすら言えないのかもしれません。文学に関して言えば、出版不況であり本が売れない状況であり、それは世界的な流れです。

 この国に限って言えば、小説専任で食べている人は10人も満たないと言われています。もちろん、小説以外でエッセイやテレビ出演、大学教授などの副業を含めてやっている人を含めても100人足らずでしょう。

 そう思いますと、プロスポーツと比べてもプロになるのが難しい職業かもしれません。芥川賞をとっても、生き残れる確率は10%を切るとも言われています。

 そして、この傾向はさらに進んでいくはずです。現在、芥川賞作品など誰にも読まれません。昨年の受賞者の名前すら世間の人達の口に上らないほどです。

 当然ながら本自体が売れていません。文学の少し先を行くと言われている音楽の業界でも、CDが売れなくなり、フリーストリーミングの世界に移行しつつある今、文学もKindleなどの電子書籍の世界でいっそうフリー化が進むでしょう。

 さらに、大学でも実業に遠いと思われている文学部が廃止され、文学という分野すら成立が怪しくなりつつあります。

 この状況からするば、文学など当然儲かるわけがない。という結論になりがちです。それでも自分としては、儲かるとあえていいたいと思っています。

 まず、これは文学の定義に関わりますが、別に本という媒体に限らなくても、言葉で書かれた作品というなら、エッセイも文学の活動に含まれますし、ブログも入れていいでしょう。

 そして、今のSNSのほとんどは、この言葉を元にしています。Twitterもインスタグラムも言葉が添えられています。

 いかに人に自分の言葉を伝えるか。これを考え始めるという点から言っても、すでに文学は始まっていると言ってもいいはずです。だから、紙媒体の本としての世界は狭くなっていますが、実際は昔よりはるかに広くなっています。

 少し前の小説の業界では、三島由紀夫の「宴のあと」裁判のように、名誉毀損の裁判が起こり、世間を騒がせたことがありましたが、今は似たようなことがあったとしてもニュースにすらなりません。 それよりも、今はSNSの世界で同じような事が起きかけています。

 ですから文章(物語)の表現は、消えたのではなく紙から電子の世界に移っただけなのです。カリスマブロガーと検索するだけで、100人以上の名前がずらずらと出てきます。そのほとんどはミリオネアです。

 もちろん、ブログの中にはただ物を売るだけを目的にしたものや、怪しげな情報商材を扱っている者も多くいます。しかし、そもそもそこに書いてある文章がうまくなければ誰も読まれないはずです。とにかく言葉で人の心を掴まなくてはいけない。

 かつて、和歌がはやり、日記文学が読まれ、御伽草子がはやり、俳句がはやりました。稼げる分野が、時代の流れの中で形態が変わってきただけなのです。しかし、その基本は繰り返すようですが言葉です。言葉で自分の思いを伝えることです。

 ブログというものも、流行って十年ぐらいたちます。ブログという分野も世間から認知されつつあります。その中には人を感動させ、気持ちを動かすような素晴らしいものも存在します。ですから、当然ブログも文学の中に入れてもいいと思います。

 そうなれば、今現在文学で食べている人の数はもっと多くなるでしょう。さらに言えば、教育現場でもこれから国語表現という、言葉を使って表現する授業に力を入れると聞いています。おそらくこれも世界的な流れを受けてのことなのでしょう。ここでも自分の思いをいかに表していくかという必要性がより高まっているという証拠です。

 そう考えると、文学をやる価値はまだまだ十分あると思います。今後、いかに自分の思いを伝え、さらに言えは興味深く伝えられる人が人がもっと高く評価されていくことになるからです。

 では、どうしたらこういった話ができるようになれるか。それは、たくさんの経験をすることが最初に思い浮かぶでしょう。しかし、それも限界があります。ヘミングウェイのように自らの経験を小説にするやり方はいつか行き詰まるでしょう。それよりも本を読むことをおすすめします。いくらでも物語の中の世界を旅できます。そして、それを踏まえて考えるだと思います。人と同じことを思っていては、人より面白い話などができません。

 しかし、本を読み、考えて、表すこと。この一連の作業をちゃんと教えてくれるところが現実世界の中ではとても少ない状況です。文学部が廃止されてしまうというのは、この一連の作業のどこかが抜け落ちているため、必要な能力を養う場として認められなかったからだと思います。

 この一連の作業を習得して、あらゆる場面で柔軟に使えるようになることを取得すれば、それは十分実業の世界でも役に立ちます。社会人としても有力な武器になるでしょう。文学部はSNSで文章を書くことまで教えるべきです。

 文書に書けることは、当然口にすることも可能です。面接、プレゼン、他人の説得などにも使えます。つまり、自分の言葉を手に入れること、それができるようになれば、文学を使って充分儲けられるということなのです。

 文学は別にベストセラーを出して印税でがっぽり儲けてお金持ちになることだけではありません。文学を通じて、人の気持ちを理解し、自分の気持ちを正直に表すことができ、他人とわかりあえる。これも一つの立派な儲け(利益)だと思います。

 だから、自分としてはやはり「文学で儲けられる」と言いたいです。ただし、断言できないのは、「あくまで広い意味で」という但し書きが今のところ必要だからでしょうか。

 エッセイとブログの違いを考えすぎてかえって混乱した仲村でした。
 ではまた

宴のあと (新潮文庫)

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