仲村比呂のブログ

Written by Nakamura Hiro

幸せの三角形を描けますか?

 志村けんさんが亡くなりました。このブログではあまり旬のトピックスは扱いたくないと思っていたのですが、どうしても書きたいので書かせていただきます。というのもそれだけショックだったのです。わりにリアルタイムに見ていた世代なので。

 しかし、その社会的損失や哀しみについては、ニュースなどで盛んに報道されているので、それには触れません。

 その他に様々な関連記事が流れる中で、志村けんさんが生前「仕事と酒と女(晩年はこれにプラスして健康)」という正三角形の中にいるのが最高」と言っているインタビュー記事を取り上げたいと思います。

 最初にこれを聞いて、志村けんさんらしいなと思いながら、同時になかなか格好いい生き方だなあと思いました。これはこれで一つのきちんとした人生哲学だと。

 人は案外、これだけはっきりと自分が求める幸せの形を描けません。三点のどれかが濃すぎたり、薄すぎたり、場所がしょっちゅう変わったりします。人によっては四角形になったり、二等辺三角形や長方形になったり、不整形になったりと。

 もちろん小さい頃から自分が求めるものがわかっていて、はっきり描けると逆に気持ち悪いですが。

 志村けんさんが言った三点にのうち、笑いにすべてを賭けていた「仕事」は言うまでもないでしょう。そしてこの濃さの一角と堂々の渡り合える刺激を求めようとすれば、当然残りの二つも濃くならざるを得ません。

 私も、仕事とお酒に関しては同じぐらいに濃い一角になっています。ただ残りの一つが違っています。女(志村さん的な意味で)ではないのは確かですが。

 70歳になって、まだ前線で活躍されていた志村さん。当然他の二つの点は濃くならざるを得ないでしょう。

 そして、今回のウイルス事変(勝手に事変と呼んでいます)のウイルスが直接のきっかけにはなったのですが、結局のところ、この濃い三つを選んだ結果が志村さんの人生を決めたのだと思います。

 ある人が、自分が求める正三角形を描いた時、それは志村さんと同じく将来の運命をも左右します。例えばそれが仕事、お酒、ゴルフでしたら、または、仕事、マラソン、女だったら、余命も生き方もがらりと変わってしまうことでしょう。

 ならば、この三つをどうするか(人によっては四つかもしれませんが)、は真剣に考えなくてはいけませんし、決めておいた方が、生きやすい気がします。

「おれは、とにかく鉄道が好きだ。酒が好きだ。女が好きだ。文句あっか」といったように、世間体を気にしたり、自分に嘘をついたりせずに、堂々と言ってしまった者の方が案外楽に生きられると思うからです。後は犯罪にならないところで、現実と折り合いをつければいいだけでしょう。

 そして、ではいったいこの三つに何を選ぶのか、そこが難しいところです。人というのは、自分探しなどしなくても、本当は直感的にわかっているのですが、実はわかりたくないというのが本音だと思います。選んだ時点でひょっとしたら、仕事も家庭も変わってしまう可能性を秘めているのですから。

 別に決めたからと言って公言する必要もないですが、人生でいったい何を優先すべきか。そしてこの優先すべきことを大切にするが故に、バランスを取るために何が必要か。自分なりの幸せの形を考えてみるのもいいなあと、この志村さんのインタビュー記事を読んで思いました。

 そして「たった一つしかない」という状態というのは、案外危うい状態なのかもしれないと思ったのも事実です。仕事だけ。お酒だけ。女だけ。

 もし、仕事だけの人が、仕事を取り上げられとき、女だけの人が、年老いて女が手に入らなくなったとき、お酒の人が、身体を壊してお酒が飲めなくなったとき。

 その時、自分を支えるものが何もなくなってしまいます。しかし、三点の内二点でも残っていれば、人は何とか持ちこたえられる気がします。そうして何とか凌いでいき、欠けた一点を他のもので補填していくのです。こう言うと、なんだか大人の処世術みたいですが、わりに現実的な生き方かもしれません。

 そして、この三つを選んだ志村けんさんは、こう言うと下世話な言い方になってしまいますが、簡潔に言い換えれば、酒飲みの女好きな芸人(それもただの芸人ではなく喜劇王ですが)です。

 しかし、この一行だけで言い換えてしまえる人生というのも、それはそれでやはり格好良いと思います。
「おれは、誰が何と言おうと、これで幸せなんだ」と言い切れるのダンディズム。それがかつて、ドリフから離れてピンでやるようになった頃の顔の険が取れ、晩年の柔らかく温和な表情にさせたのだと思います

 人の人生は長さより質だと言われます。私としてはどちらでもいいとは思います。健康を三角形の一点に据えて、生きられる限り生き抜くのもいい人生だと思いますし、志村けんさんのように少し短いけれど、自分を貫いて充実した人生を送るのもまたいいと思います。

 ともかく、自分が選んだ三角形がもたらす結果を納得して受け止めて死んで行ければいい気がします。

 志村けんさんの芸で一番秀逸なのは、アイーン(自分はやったことはないけれど)だと思っている仲村でした。
  ではまた

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